怪訝そうに黒い瞳で私を見詰め
深い森に消えて行く鹿の姿。
それは夢の中の様で 音の無い世界・・・
懐中時計の裏フタに彫られた鹿が、
山で暮らした13年間を思い出させる。
人と出会うより鹿と出会う方が
多かった山での暮らし、
鹿と出会った日は幸せな気分になれた。
だから、東京で暮らす今、
明治27年 (1894) に造られた、
121歳のセス・トーマスの懐中時計。
100年以上を経過したアンティーク。
カチカチとケースに音を響かせて、
今も時を刻む。
100年以上を経過したアンティーク。
カチカチとケースに音を響かせて、
今も時を刻む。
セス・トーマスと言えば、
由緒ある旧家の柱を飾った掛時計として
日本でも上流社会では知られていた。
日本でも上流社会では知られていた。
そして、日本の時計産業は、
このセス・トーマスの模倣から出発した。
1813~1930年、セス・トーマスの永い歴史の中で、
懐中時計を造った期間は
1884年~1915年の僅か30年間。
その生産数は極めて少ない。
19世紀末から20世紀初頭、
機械文明の進化は社会を大きく変貌させた。
1929年、哲学者オルテガの「大衆の反逆」
に象徴される根源的な価値観の変化。
それは、高貴な生に対する下等な生の反逆。
大衆の中に見る野蛮性と原始性の反乱。
現在、日本の幼稚で利己的な社会風潮が
それを如実に示している。
ハワード、イリノイ、ハミルトン、エルジン、
ハンプデン、ウォルサム、セス・トーマス、
1929年、哲学者オルテガの「大衆の反逆」
に象徴される根源的な価値観の変化。
それは、高貴な生に対する下等な生の反逆。
大衆の中に見る野蛮性と原始性の反乱。
現在、日本の幼稚で利己的な社会風潮が
それを如実に示している。
”La rebelion de las masas"
Jose Ortega y Gasset
中公クラシックス新書 寺田和夫 翻訳(左)
ちくま学芸文庫 神吉敬三 翻訳(右)
1930年代、ハワード、イリノイ、ハミルトン、エルジン、
ハンプデン、ウォルサム、セス・トーマス、
それまで世界を凌駕していた
アメリカの時計産業は消え去った。
栄華を誇ったイギリスやフランスの時計も
変革に対応出来ずに衰退した。
そして、それまで下請け的存在だった
スイスの時計が成上がって行く。
セス・トーマス、
裏フタに彫られた野生の鹿の様に
アメリカの時計産業は消え去った。
栄華を誇ったイギリスやフランスの時計も
変革に対応出来ずに衰退した。
そして、それまで下請け的存在だった
スイスの時計が成上がって行く。
1920年代のアメリカ製時計の美しいムーブメント
1920 E Howard Series O 23J 16s LS
1920 South Bend The Studebaker 329 21J 18s
セス・トーマス、
裏フタに彫られた野生の鹿の様に
時代に取り残され、消えて行った時計達。
その消滅の美学が私を魅了する。
そして、私は待ち望む。
若い人達による宇宙的な視野からの
新しい価値観と美学の到来を・・・
新しい価値観と美学の到来を・・・
2 comments:
XKのエンジンルームの様に渋く、重みありウットリとします。
確かに、古い懐中時計はXKエンジンの様ですね〜
前面クリスタルガラスを手の平で回して文字盤を露出し、
中のレバーを引上げて針を動かし時間合わせしたり、
チョークを引かないとエンジンが掛からない
面倒なXKエンジンと同じです。
すぐに飽きてしまうと思いますが、
分解掃除が出来る技術を身に付けたいと思う程、
古い懐中時計に凝りまくっています。
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