2014/09/25

"ASTLEY'S"のパイプには「消滅の美学」が漂っている。

エレガントなクラシック シェイプのカナディアン。
18Cmの細長いシャンクに魅せられる。
このシェイプをカナディアンと呼ぶのは、
カナダの木こりが使っていたパイプの形状に由来する。



時代の変化に対応出来ずに消えて行った
"Astley's"のパイプが欲しい。
それは、「消滅の美学」に私が浸りたいからだ・・・

興味深い”Astley’s”の歴史とパイプについて、
ここ数日、私は調べ続けていた。
資料は少なく、”Pipedia”でも記述は数行しか無かった。
しかし、新品で残っていたカナディアンシェイプの
Astley's Pipe をオークションで見付けた

ダンヒルに依託し製作された1990年代の"Astley's"。
"James Upshall Pipe" のブランドを所有する
Mordechai (Molty) Ezrati 氏が”Astleys"を買収した時に
ピカデリー・アーケード店に残されていた整理品で、
最後の"Astley's" だと説明されている。
どうしても私は手に入れたいと入札した。

どんなに収集的価値を持つヴィンテージ パイプでも、
中古パイプである限り、使い込まれて角が丸くなったり、
小さな傷があったりするものだ。
また、磨き過ぎて刻印文字が浅くなっている場合もある。
印刷用のルーペでチェックする私の性格では
ヴィンテージ・パイプは無理だと解っているが、
このカナディアンはデッドストック品だ。

最近、オークションで数本のVintage Comoy's Pipeを
落札した経験から確実な落札方法を学んだ。
オークション終了2時間前のカウント ダウンが始まると
狙っていたビッダー達が入札を始め価格は大きく動く。
"SASIENI" を逃した失敗を繰返したく無いから
Max Bidを評価額以上に高い金額を提示して待った。
結局、私以外に一人もビッダーは現れず落札した。

そして、とても驚いた。
売主は、なんと”James Apshall Pipe”のオーナーで、
”Astleys”を買収したMordechai Ezrati氏が所有する
”William Astley & Co, Limited"だったのだ!
なんと言う幸運な偶然。
それは、売主から届いたメールの差出人の名前、
Mrs. Karen Ezrati(Ezrati夫人)で解った。


ーーーーーー
俗世に対して排他的に存在した
ジャーミン・ストリート109の老舗 "Astley's"
彼らは自らパイプを製作しなかったが、
名門 Charatan, Dunhill, James Upshall, 製作を委託し、
世界の王侯貴族、上流階級の人々を顧客とした
最高級パイプを取扱う店として知られていた。

しかし1980年代、時代の流れには逆らえず、
ジャーミン ストリート109の店舗を閉鎖。
ピカデリー・アーケードに移り、
1990年代の後半まで販売を続けた・・・

現代社会では、良心的な商売など存続し得ない
その何よりの証と言える。



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