太陽に金色の馬が跳ねる冨士山麓の春。

リアウインドに輝く馬のステッカー。

夏木先輩が所有する名車群に貼るため僕がデザインしたが、

出来上がったステッカーを僕も貼った。
ファセルベガの左右のフロントフェンダーに貼ったこのステッカーを
夏木先輩は僕に見せるため、わざわざ河口湖まで出向いてくれた。
乗馬を得意とする先輩のクルマにソレはとても相応しかった。

僕は遠慮してリアウインドに小さく貼った。

かってジェームス・ディーンのポルシェ356スピードスターには

スタンダードバキューム石油のマークだった羽根を持つ赤い馬が
左右のフロントフェンダーに貼られていた。

そんなポルシェに憧れた昔を、しみじみと僕は想い出した・・・

映画「理由なき反抗」の死を賭け断崖に向ってクルマを全速で走らせ
男の度胸を試す「チキンゲーム」は衝撃だった。
まだ日本では貴重だったクルマを断崖から落としても平気な彼らを、
日本の若者達は驚きと羨望の眼差しで見つめ憧れた。
そして、命よりも仲間内での度胸の強さを誇る彼らに共感した。
僕も赤いスイングトップを着てジミーを気取っていた。

春の暖かい日差しにポルシェで走ろうと思ったが、
氷点下の極寒の中でクマの様に冬眠していたポルシェは

バッテリーが放電してエンジンは目覚めなかった。

充電機を繋いで充電しながら日光浴をさせている。

まるで電気自動車の様なポルシェだ・・・



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