

高野山ヴェトロモンターニャの顔「夏木陽介」氏と
彼の愛車1936年製ジャガーSS100はフラッグシップとして、
今年も台風の被害を受けた和歌山を激励するため走る。
夏木氏にヴェトロモンターニャへの参加をお願いした
16年前のあの日を僕は懐かしく想い出す・・・
1995年、夏木氏がSS100を所有していると知人から聞いた。
白いSS100と白いXK120を並べて高野山を走れたらと、
縁もゆかりも無かった夏木氏に失礼を顧みず僕は手紙を書いた。
「日本の遅れた車文化発展のために力をお借りしたい」と。
身勝手な手紙に返事を頂けるとは思ってもいなかった。
数日後、「夏木プロですが・・・」と電話が入った。
「夏木はプライベートで参加したいと申しております」と。
それは通常あり得ない条件での参加を意味していた。
自動車生産大国でありながら車文化が希薄な日本の現状を
夏木氏もまた憂いて共感して下さったのだろう。
第5回ヴェトロモンターニャのパンフレットに、
夏木氏のオフィスにお願いに上がったあの日のことを
僕は感謝と感動を込めて次の様に書いた・・・・

彼のオフィスには "AMSTERDAMER" の
タバコの香りが漂っていた。
私を暖かく迎え入れてくれた彼は海泡石のパイプを
愛おしむかの様に撫でながら語り始めた。
そのパイプは程良く使い込まれサハラの砂を想わせた。
サハラ砂漠の大きさを、優しさを・・・
KIFFAのキャンプ地に毎年欠かさず250キロもの路を
歩いて会いに来てくれる少年を・・・
少年が手作りした小さな象や亀の石のおみやげを・・・
生と死の極限を経験した男のみが醸すことの出来る
謙虚な語り口で私に聞かせてくれた。
砂漠を語る時、彼の力強い顔は和み、
遠くを見るかのような眼を窓に向けた。
私にはアラビアのロレンスの姿がダブって見えた。
オートバイの名車ブラフ・シュペリアと砂漠を愛した
英国の男爵ロレンスはこう語っている。
「オートバイは貴族的な乗り物である。なぜなら、
自己を犠牲にして相手を救う事が出来る」と。
事実、ロレンスは道路に飛び出した少年を救うため、
自ら街路樹に激突してこの世を去った。
今もMVやノートンを駆り、RRクラウド3を、
そして砂漠を愛する彼もまた、
この言葉を知っていると、私は確信した。
俳優でありながら、パリーダカールに10年間も挑戦し続け、
偉大な成績を残し日本男児の心意気を世界に知らしめた男、
「夏木陽介」。
昨年、彼はパリでの仕事をキャンセルしてまで、
我々の高野山ヴェトロモンターニャに初参加してくれた。
彼は私に何も語らなかったが、このキャンセルしての参加は、
後日マネージャーの方から始めて聞かされた。

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ジャガーの創業者ウイリアム・ライオンズのデザインによる
ジャガーSS100はこの時代の英国製スポーツカーの中で
最も美しいクルマとして世界の車愛好家を唸らせる。
1936ー1940年までに2.5リッター198台、3.5リッター116台と
僅か314台が生産されたに過ぎ無い。
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