2013/04/04

2010年ピーターソン・イヤーズ・パイプ。




もう2ヶ月間、酸素よりもタバコの煙を多く吸って来た。
葉巻からパイプに変えて、その魅力の虜にされたからだ。
パイプ喫煙は葉巻より私の性格に合っている。
海外のサイトで年季の入ったパイプ喫煙者のブログを読み漁り、
国内のパイプ2チャンネルの書込みまで読んで学んだ。

私に相応しいのは、どんなパイプかを教えて呉れたのは、
2010年のピーターソン・イヤーズ・パイプのサンドブラスト。
多分、誰にも見向きもされずに3年間もタバコ店に飾られ、
ネットショップに出ていた売残りパイプだろう。
”Peterson Pipe of the Year 2010"と称するからには、
企画の段階からいろいろと手の入り方が違うのだろうと思い
重量が65gもあったが試しに購入してみた。

イヤーズ・パイプの箱はタバコ葉2010 Special Reserve"の缶と連動している。
価格相応の造りだが立派な金具がイヤーズパイプだから少しでも喜んで貰おうとする
アイルランドの人たちの温かい心が伝わって来る様だ。


配達されたパイプに、私は一目惚れしてしまった。
アイルランド男を想わせる様な逞しさに溢れたフォルムは、
一見、ごく普通のパイプの様に見えるが、
これまで何百本と見たパイプの写真には感じなかった
完璧なバランスを保つ3次元の曲線で見事に構成されている。
これが150年の歴史が培ったパイプの美学なのだ。
黒いサンドブラストのシャンクに合わせた太いステムには、
純銀のWリングが誇らし気に巻かれている。
何と鋭い美意識、これこそ私が求めていたパイプだ。


もう、他のパイプで喫煙する気分にはならないほど、
このパイプは私を満足させてくれる。
一日中、このパイプで喫煙し続けているがタバコが実に旨い。
吸い終わるとモールを通して掃除し、シャンク煙道の小さな穴を
懐中電灯で照らし綿棒で湿りを除去する。(フィルターは無い)
そして再び、ボウルに新しいタバコを一杯詰めて火を点けるのだ。
夜はカメラ機材用の乾燥庫で乾燥させ休ませているが、
ローテーションのため同じパイプをもう2本欲しいと探した

ダンヒルを購入したウイーンのショップに2010年は無く、
2011年のピーターソン・イヤーズ・パイプがあった。
六角形のボウルが洒落たエボニー(黒檀)の魅力に引かれ、
同じ様な雰囲気だからと注文してしまった。
しかし、どうしても2010年が欲しいと執念深く探し続けたら、
ニューヨークのタバコ店に残されていた。
シリアルNo.が入る1000本限定の希少なブライヤーもあったが、
これまで気になったグレイン(木目)への興味は失せていて
同じ黒いサンドブラストを注文した。



嫌いだったサンドブラスト仕上や重そうで曲がったパイプが、
今では。私のお気に入りになってしまった。
重量38gで長さ17cmストレートのダンヒル・クロスビーと、
この重量65gのパイプを口にした感覚は変わらない。
ストレートのパイプはボウルの重力が前方に離れて掛かるが、
ベントしたパイプは重心が口元に近いから軽く感じる。
しかも、サンドブラスト仕上げは非常に軽い。
ダンヒルの4110でブライヤーとサンドブラスト(シェル)を
比較すると約10gもの重量差がある。
ブライヤーのスムース仕上げはサンドブラスト仕上げの素材より
より高品質な素材が要求されるが、その差は大きい。
そして、大きな火皿は周囲のタバコ葉を通して煙が熟成され、
サンドブラストの凹凸が表面積を増やし放熱効率を高めるから
よりマイルドな芳香が楽しめる
葉巻でも細いパナテラ・サイズよりも太いロブスト・サイズが
マイルドな味わいなのと同じなのだ。

パイプの大小と重量の違いをスポーツカーに例えれば、
ライトウエイトのピーキーなエンジンの加速感と
トルクのある大排気量エンジンの加速感との違いと同じだ。

このイヤーズ・パイプのシェイプを見ていると、
2010年のグッドウッドを駆け抜けていた
濃紺のジャガーC-Typeの丸いリア・ビューが
私の眼に浮かぶのだ。







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