2012/01/31

映画「自転車泥棒(Ladri di Biciclette)」

Photo: Vittorio De Sica










「知識人は歴史的責任を自ら引き受けなければならず、
 人々の要求を代弁しなければならない・・・」

敗戦の傷跡の中で育った僕の少年時代。
強烈な影響を受けた映画と言えば、
1950年代に観た「自転車泥棒(Ladri di Biciclette)」である。
世の不条理と人間の尊厳を教えて呉れた映画であった。
この映画の中の少年には愛する父親がいたが、
戦争で父を失った僕には想像の父しか居なかったから
より強烈に心を震わせたのかも知れない・・・。

父の涙を見て、少年は強く父の手を握る。
手を繋いだまま、親子は街の雑踏の中を歩いていく・・・。
絶望的なシーンだが、僕には羨ましくもあった。

イタリアのネオレアリズモ(新写実主義)の名作、
ヴィットリオ・デ・シーカ監督の「自転車泥棒」。
第2次世界大戦で荒廃したイタリアで興った、
未来を築こうと社会問題や現実を直視した映画人の活動。
新写実主義(ネオレアリズモ Neorealismo)の映画を通じて
未来を築くため彼らは人々に語りかけた。
ロベルト・ロッセリーニ、ヴィットリオ・デ・シーカ、
ルキノ・ヴィスコンティ、フェデリコ・フェリーニ達。
夏の嵐、ひまわり、無防備都市、道、サテリコンなどの
映画は日本でも話題になった。

あの頃と同じ様に荒廃し、むしろ堕落した現在の日本。
敗戦当時は進駐した米軍が助けてくれた。
しかし、今は自らの力だけで立直らなければならない。
ただTV評論家の様に現状を批判し傍観するだけではなく、
それぞれの立場で行動しなければと思う。


...

2 comments:

kunurupu said...

懐かしい映画の話からの今の日本の姿まで書き出されているブログに
我がなすべき事についてしばし考えさせられております。有難きことと格別の思いでよまさせて頂きました。

pepekeiji said...

Kunurupuさん、コメントありがとう。

クヌルプはヘルマン・ヘッセの「クヌルプ」からの名?
類稀な天分を備えながら社会から脱落し、
流浪するしかなくない放浪者を意味しますね。
何と言うロマンティックなお名前!
ご教養の程とお人柄とが偲ばれました。

Post a Comment