2011/12/19

色彩感覚の劣化と構図感覚の喪失。

John White Alexander "Repose" (1895)

パソコン、iPad、スマートフォンの普及。
これら文明の利器は僕も享受する程に定着しているが、
その代償として人々の美的感性は失われつつある。
液晶パネルによる色彩感覚の劣化と、
コンポジション ( 構図 ) に対する感覚の喪失だ。

小さく限られたスペースでの色彩やレイアウトは、
伝達のみが優先され美的な構成など無視されるからである。
そして幼児的なイルミネーションの氾濫に繋がって行く。
しかし、美意識は時代と共に変化して来た様に、
いずれ未来には未来に相応しい美学が確立するのだろう・・・

失われつつある現代最後の美学を感じさせる例として、
アメリカの象徴主義の画家(1856~ 1915)
ジョン・ホワイト・アレキサンダーの絵を紹介しよう。
”Repose”( 休息 )と題された絵には溜め息が出る。
それは、アールヌーヴォー風に波打つ線のリズムによる
完璧な構図とシックな色彩からだ。

絵画なんて観る人の好き嫌いが全てだから、
評論家の様な講釈は無意味だが、
敢えて、この絵が大好きだから書こう。

1895年当時、こんな大胆に黒いラインが入った
白いドレスが存在したのでは無い。
アレキサンダーが構成のため感覚的に描いた線なのだ。
柔らかな身体を感じさせるよう強調された黒い線は、
細い腕から華奢な背中へと伸びて、
観る者に何かを語りかけているようだ。
白いドレスは、羽根を休める白鳥のように、
静かに時を止める・・・。

何という繊細な感性、何と言う気品に満ちた表現。
やがて、こんな美意識も失われてしまうのだろう・・・


...

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