2014/10/18

ストレートグレインの"Vntage GBD Virgin" 9465 Liverpool Saddle Bit.


日本でのパイプ喫煙者数は僅か3万5千人程度。
日本のパイプ煙草消費量は
ヨーロッパのタバコ店1店舗の年間総販売量と同じだと言う。
しかし、パイプの煙、それは消滅の美学。
私がパイプを愛する所以だ。


1960 GBD Shape Chart
Liverpool Saddle Mouthpiece
上から4番目の#9645

ヴィンテージ”COMOYS"のトップグレード“Blue Riband"
ストレート グレイン(柾目)を手に入れたから
もう、パイプは卒業だ、と思っていた。

しかし、ふと、オークションで見掛けた
Vintage”GBD”の最高峰"VIRGIN"のストレートグレイン。
その美しさに惑わされ、また落札してしまった。

パイプ作家による奇抜な造形の創作パイプは大嫌いだが、
長い年月が培い確立したクラシックシェイプの
スレンダーなリバプールでサドル ビット。
私の好きな小さなボールとスレンダーな直線のシャンク。
薄く軽く口に馴染む馬の鞍型のサドル ビットだ。

オークションで入札しようと”GBD”を徹底的に調べた。
”GBD”に対して私は誤解していた様だ。
1981年、Cadoganグループに”Comoy's”と共に買収され、
"Comoy's"のローグレードラインに位置付けされていたからだ。
しかし、Vintage"GBD"の時代は最高級品だったのだ。

ヴィンテージ期の”GBD”の各ライン
Virgin, Century, New Era, Prestige, Prehistoric Perspex.
特に”Virgin"は、最高品質の細かいストレート グレインの
美しさを生かすためナチュラル仕上げだったと書かれている。
1850年。ガヌヴァル、ボンディエ、ドナンジェの
創立者3人の頭文字を社名にしてパリで誕生した”GBD”。
その歴史はパイプ史の変遷を知る上で興味深い。

コレクション価値がある”GBD”パイプと言えば、
1952年、サンクロード工場が廃止されるまでの
"SAINT CLAUDE FRANCE"のパイプ。
そして1980年、Cadogan 吸収合併以前のパイプ。
通称、"Pre-Cadogan"と呼ばれているが、
ステムの"GBD"マークが真鍮製のラウンデルの象眼で、
生産地を示すP.O.S.が"LONDON ENGLAND"と
直線で表示されたパイプである。


制約が多く観念的な造形しか許されない喫煙パイプ。
その小さな対象の中にそれぞれの美学が息づいている。
その熟練を伴った繊細な美意識が私を魅了する。
奇抜さと珍しさだけの素人芸が芸術と評価され脚光を浴びる
現代の風潮から、私を逃避させてくれる。


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