2014/02/04

まだ、グルメを気取る様な野暮な男だった。


黒いロングコートが長身の君に似合っていた
そんなコートに相応しいのは高級フランス料理店
僕は得意になって君をエスコートした

「お預かり致します」と
コートを脱ぐ君にスタッフが手を添える
君の黒いセーターの肘は破れ穴が開いていた
でも その穴から覗く白い肌は
どんな高価な宝石よりも美しいと僕は感じた
気品に満ちて優雅に振舞う君は
まだ僕が高校生の時、憧れて壁に飾っていた
ドガの少女像を想い出させた

僕に恥をかかせない様にと
君は気を使ってセーターの穴を手で隠し
僕にウインクした・・・

若かった僕は
まだ、グルメを気取って得意になる様な
野暮な男だった。



*現在の様に衣料品が氾濫する以前の社会。
 良質の衣料を大切に着ていた時代の話です。

2 comments:

ryu said...

粋な男性や素敵な女性がいましたね・・・
今では時間の経過が速くなったことで、
演技する間もなく終演を迎えてしまいま
す。結果、粋な人や素敵な人は姿を消
し、みんな時の谷間に落ちていなくなっ
てしましまいました。

僅かな人たちを残して。

多様化する価値観と歪曲したアイデンテ
ティーで自我のみならず世界までも崩壊
(クライシス)に向かっているようです。

物質の大量消費はやがて精神の大量消費
へと道を開くことになるのでしょうね。

幸せでいて、しかも不幸な時代に居合
わせたものです。

pepekeiji said...

ryuさん

仰せの通り、「自我のみならず世界までも崩壊に向かっています。」
今回、都知事選候補の細川前総理が提唱するパラダイム・チェンジ。
同候補の佳代子夫人も述べている「脱・経済成長」。

もともとキリスト教的背景を持つヨーロッパでは常識的な価値観。
アメリカでも昨年の1%vs99%運動で変化しつつあります。

しかし、未だ経済成長を国家目標にしている様な日本で、
このパラダイム・チェンジが理解されるのは崩壊後かも知れません。
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