2013/03/19

最後まで支持に応えようとするダンヒルの義務感。




「シェル」より「ブリエール」の方が魅力的だと思っていたが、
こうして2本を見比べるとシェルの虜になってしまう。

1917年、ダンヒルが生み出したサンドブラスト仕上げ、
「シェル」はダンヒルを象徴する代表的なパイプである。
ブライヤーの年輪が凹凸に浮び上がり縞模様でパイプを取巻く。
その自然の美しさを黒い塗装で押さえた重厚さは、
華美に目立つ事を嫌い、あえて押さえた服飾を最良とする
英国人のドレスダウン感覚に通ずる気品を感じる。
そして、日本の侘び寂び文化にも通じる美学だとも思う。

このサンドブラスト仕上げをダンヒルが”Shell”と呼ぶのは、
工場でサンドブラスト加工を施した素材を運ぶ時に立てる音を、
アルフレッド.ダンヒルが「貝殻の音の様に聞こえる」と
「シェル」と呼んだのが始まりだと伝えられる
素材が出す騒音をカラカラ鳴る貝殻の音と聴くダンヒルの感性、
やっぱり彼は偉大な芸術家であり詩人だったのだ。
貝殻の様に硬く軽さが求められるパイプと見事に連動もする。

偉大なホンダの本田宗一郎氏やソニーの井深太氏など、
世界的大企業に成長する企業の創業者は
利潤追求よりもモノを創り出す喜びを重視する芸術家なのだ。

当初、アルフレッド・ダンヒルは家業の馬具製造業だった。
しかし、時代と共に自動車用品販売に転じ”Dunhill Motorities"を設立。
ホーン、ライト、ゴーグル、メーターなどを扱っていたが、
ダンヒル自身が考案した風避け付きドライブ用パイプが大当たりし、
業界最大手に成長、ダンヒル喫煙具の基礎となった。

サンドブラスト処理はクルマ好きにはよく知られている。
ダイヤモンドに次いで硬い金剛砂を研磨剤に使い
クルマの場合は錆びた部品などを磨き再生する方法であるが、
パイプの場合は表面に高圧で噴射し木目の柔らかい部分を削り取り
硬い木目部分を浮び上がらせる仕上げ方法である。
表面積が増えて放熱効果が良くなり軽量化にもつながる。

シェルのパイプは同じ重量のパイプよりも軽く感じる。
やっぱり、ダンヒルのパイプはくわえた瞬間、その違いが解る。
それは軽四輪エッセとポルシェC4Sの操縦感覚の違いに近い。
エッセは買物や雨や雪の中で頼もしく活躍してくれる。
ポルシェは長距離ドライブで威力を発揮してくれる。
だから、他のパイプもそれぞれの持ち味に合わせて愛用する。


いずれ、時代と共にパイプ喫煙者は消滅するだろう。
100年間に渡り世界に君臨して来たダンヒル喫煙具の名は、
ホワイト・スポットの名に変わって存続した。
それは、喫煙世代だった我々の支持に最後まで応えようとする
名門の誇りと義務感からなのだろう・・・。





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